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    KOUTEIBEKKAN

    KABURAGISHIZUKI Diary

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    花火のつぎに終わるのは①

    10/11 11:45

    打ち上げ花火の最後の一発が、寂しげな余韻を残して柔らかく響いた。

    割れんばかりの拍手と引き返す人々の雑踏。再び賑わい始めるりんご飴屋の夜店。
    「凛?」
    突如背後から声がして、肩に手が触れた。
    驚いて振り返った拍子に、ペットボトルのサイダーが揺れた。
    .
    花火なんか見たのは久しぶりだった。
    小学生の頃、地元のショボい花火大会にいったときは、指の間の酷い靴擦れの痛みに花火どころではなかった。
    また、ちょうど小学生の感性では、いい気になって花火なんて見たところで、もはやなんの魅力も感じ取れないのだ。
    浴衣は暑いし、足は痛いし、籤引きの景品は邪魔だし、早く帰ってポケモンのパールをやりこみたかった。
    あれから5年。
    私は少し大人になって、花火大会のチラシにふと足を止めるくらいには余裕ができた。
    ゲームもすっかりやらなくなって、友達も彼氏もいなくなっていた。
    「お母さん、10日の花火ってうちから見える?」
    「そんなの見えないわよ。屋上でも開けてもらえたら別でしょうけど、うちのマンションからじゃせいぜい盆踊りの日に上がる花火くらいしか......」
    「そ、わかった」
    「あんた、もしかしてわざわざ見に行く気?
    花火は飽きたって毎年言ってたじゃない。何?誰かと一緒に行くの?」
    「んー、行こうか迷ってる。一人だよ。誰も誘わないつもり」
    「寂しい女ねぇ。それならお金は渡すから、出店で晩御飯食べてきてちょうだいね。お母さん夜仕事だから、お父さんにも外で食べてきてもらうわ」
    「わかった」
    一人で浴衣を着込んで、電車で都心から離れた大きな川の堤防までやってきた。
    早く着きすぎたつもりだったけれど、既にそこには場所取りのシートが隙間なく敷き詰められており、あぶれた人達がそのすぐ後ろで列をなして待っている。
    「あ、たこやき」
    適当に目に留まった夜店で腹ごしらえをして、自販機でサイダーを買った。本当は麦茶が飲みたかったのだけれど、既に売り切れで買えなかった。
    一人は気楽でいい。
    最悪花火が見られなくても、こうして祭りの空気を味わえるだけで十二分に価値があるというものだ。
    むしろ他人に振り回されて気を使って回る祭りこそ時間の無駄だ。
    夏はそんなに長くない。祭りは一夜で終わってしまう。そんな貴重な時間を、他人に割くだなんて馬鹿馬鹿しい。
    神社の石段でフランクフルトを頬張っていると、遠くから余興の舞台を任せられたゲストの若手芸人がコントを見せている声がした。私には一言たりとも琴線に触れなかったが、会場は盛り上がっているようだ。
    ゴミ箱にトレイを捨てたちょうどその時、花火の打ち上げ10分前を知らせるアナウンスが流れた。

    花火のつぎに終わるのは①

    打ち上げ花火の最後の一発が、寂しげな余韻を残して柔らかく響いた。

    割れんばかりの拍手と引き返す人々の雑踏。再び賑わい始めるりんご飴屋の夜店。
    「凛?」
    突如背後から声がして、肩に手が触れた。
    驚いて振り返った拍子に、ペットボトルのサイダーが揺れた。
    .
    花火なんか見たのは久しぶりだった。
    小学生の頃、地元のショボい花火大会にいったときは、指の間の酷い靴擦れの痛みに花火どころではなかった。
    また、ちょうど小学生の感性では、いい気になって花火なんて見たところで、もはやなんの魅力も感じ取れないのだ。
    浴衣は暑いし、足は痛いし、籤引きの景品は邪魔だし、早く帰ってポケモンのパールをやりこみたかった。
    あれから5年。
    私は少し大人になって、花火大会のチラシにふと足を止めるくらいには余裕ができた。
    ゲームもすっかりやらなくなって、友達も彼氏もいなくなっていた。
    「お母さん、10日の花火ってうちから見える?」
    「そんなの見えないわよ。屋上でも開けてもらえたら別でしょうけど、うちのマンションからじゃせいぜい盆踊りの日に上がる花火くらいしか......」
    「そ、わかった」
    「あんた、もしかしてわざわざ見に行く気?
    花火は飽きたって毎年言ってたじゃない。何?誰かと一緒に行くの?」
    「んー、行こうか迷ってる。一人だよ。誰も誘わないつもり」
    「寂しい女ねぇ。それならお金は渡すから、出店で晩御飯食べてきてちょうだいね。お母さん夜仕事だから、お父さんにも外で食べてきてもらうわ」
    「わかった」
    一人で浴衣を着込んで、電車で都心から離れた大きな川の堤防までやってきた。
    早く着きすぎたつもりだったけれど、既にそこには場所取りのシートが隙間なく敷き詰められており、あぶれた人達がそのすぐ後ろで列をなして待っている。
    「あ、たこやき」
    適当に目に留まった夜店で腹ごしらえをして、自販機でサイダーを買った。本当は麦茶が飲みたかったのだけれど、既に売り切れで買えなかった。
    一人は気楽でいい。
    最悪花火が見られなくても、こうして祭りの空気を味わえるだけで十二分に価値があるというものだ。
    むしろ他人に振り回されて気を使って回る祭りこそ時間の無駄だ。
    夏はそんなに長くない。祭りは一夜で終わってしまう。そんな貴重な時間を、他人に割くだなんて馬鹿馬鹿しい。
    神社の石段でフランクフルトを頬張っていると、遠くから余興の舞台を任せられたゲストの若手芸人がコントを見せている声がした。私には一言たりとも琴線に触れなかったが、会場は盛り上がっているようだ。
    ゴミ箱にトレイを捨てたちょうどその時、花火の打ち上げ10分前を知らせるアナウンスが流れた。

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