嘘と真実の狭間で。

嘘は悪いこと。

そう習ってきたはずなのに、大人になると、

それだけでは片づけられない場面がいくつもあることに気づきます。

このお仕事をしていると、

優しい嘘に触れることがたくさんあります。

『またすぐに会いに来るね』

『ほんとに、こんなに癒されたのは初めて』　

『他の誰よりも好きかもしれない』

『君以外は指名しないよ』

全部をそのまま信じるほど、

私は子どもではなくなってしまったけれど。
信じれる自信すらないけれど。

でも、ふとした間や、

目の奥に浮かぶ色を見てしまうと、

言葉の奥にある『ほんとう』を、

信じたくなる気持ちになるんです。

たとえば私自身も、

時に嘘をつくことがあります。

『大丈夫』って笑った日も、

『寂しくないよ』って微笑んだ夜も、

心の中では、小さく泣いていたかもしれない。

でもそれは、誰かの優しさを壊したくなかったから。

私自身を守るための嘘であり、

目の前の貴方に寄り添いたいという願いでもありました。

本当のことだけで生きていけたら、

それが一番誠実なのかもしれません。

でも人の心はそんなに単純じゃなくて、

綺麗な気持ちも、汚れた感情も、

全部を抱えたまま、ただ静かに触れ合っているだけなのだと思います。

だから私は今日も、

言葉そのものよりも、

その場に流れる『温度』や『気配』を信じていたい。

たとえそれが嘘だったとしても、

誰かを傷つけないように差し出されたものなら、

私はそれを、『優しさ』と呼びたいのです。